コブ談義
ハチ北の北壁を中心に滑るが、リフト乗車中も技術談義はほとんどしない。
我々の合言葉は「机上理論(空論)<経験値」=「習うより慣れろ」だからだろう。
それにしても、コブを滑るのはとても難しい。
体の柔らかい若い人が挑むならまだしも、初老たちが無心に挑戦している。
かれこれ20年以上はこんなことを繰り返している。
コブの難しさは、向かうコブの形が常に変化していることにも起因している。
早朝は夜間に凍って締まっている。
昼前には溶けて削られはじめる。
ハチ北はブーコー・ピープルがたくさん来場するため午後はどんどん削られるため、リフト1本乗れば、すっかり形状が変わって深く深く掘り進められることもザラ。
我々のコブ道場は、10時半鳥取発・12時ハチ北滑りはじめ・16時まで昼飯挟んで滑るため、午後のコブが成長する時間帯がメイン。
最初の1本で良い感触だとしても、最後まで続くことは少ない。
後半は脚力が失われ、腰に負担も大きいためガマン合戦で、その日の体調なども見ながら辛い人にあわせてハチ北を後にする。
コブ道場は辛楽しく、コブの変化を楽しむスポーツだ。
と、思っていたし、今でもそう思う。
コブをうまく滑るためには、そのコブをどう滑るかにかかっているが、
コブに対してバンバンと体当たり的に行くフィヨルドタイプもあれば、
どうやって騙し騙し躱していこうかと考えている自分、
Y酪さんもタイプ的には私と同じだろうか?
バンバン行けば、コブに当たって砕けることも多く、撃破する確率と撃破される確率はイーブンかも。
一方、こなして行こうとすれば、腰が引けることも多く、コブの段差が体に響く。
腰が引けるため、後傾でスピードコントロールが難しくなりコースアウトも多くなる。
最近気づいたことだが、コブの中での自分の腰の位置=高さが、スーパーモーグルコースなど長く滑りきるコツだと判明した。
これを違う論点で言えば、足によるベンディング=吸収力なんだろうと。
コブのトップの高さを腰の位置とすれば、コブの底までの高さは少なくて50㎝ほど、深くなれば1㍍を超える。自然立地の傾斜にコブは位置するから実際のコブのトップからボトムまでの高低差は1~1.5㍍に及ぶ。
私は学んでいないが、物理学的に言うならば着地した際の両足に掛かる重量は、自重と落下距離に影響されるだろうから、コブのトップからボトムに落下を挑めば、相当のダメージは免れない。
そこで、腰の位置をトップとボトムの中間に置き、下半分は足を引いて吸収する。
コブの裏は、足を伸ばしつつ、足を降ろしていく感覚で。
このことをコブの裏をなめると表現するのだろう。
Y酪さんなら「ねぶる」か。
コブの底に足が着く程度が理想的な基本ポジションであり、そこから両足を思い切り引いて吸収しつつコブを超え、超えたコブの向こう側に足を降ろす。
机上理論では、こう表現できても、いざ新雪・バードバーン・腐れ雪などではなかなか再現性は乏しく苦労する。
基本的な腰のラインを50㎝下げるだけなのだが、これは子供の目線に下げて世の中を見てみることに似ているか???
技術的革命は、既成概念で固まった頭ではなかなか思いつかないような所から産まれるものらしいが、モーグルの滑りもまた普段の滑りからだと、腰の位置を下げることはなかなか理解できないものだ。
そんなネタを、たまにまじめにしつつ。
体感スポーツは、経験値を少しずつあげていく。
我々のコブ道場は、一体何歳まで続くのかわからないが、近いシーズンには50の区切りにできればウサギ平・赤倉チャンピオンAコースとか、はたまたブラッコムの壁を滑りに行きたいものです。