月のチーズ
畜産に関わる汚水処理にまじめに携わって10年が経った。
はじめはとにかく汚物感を無くすことに全力を注いだ。
畜試がたまたま簡易曝気の完成型モデルとして稼働しており、それを現場で再現するために試行錯誤した。
試験場は、たまたまの賜で、設計計算もメカニズムもだれ1人説明できる人がいなかったが、それが逆に良かったのか、ここから手探りの簡易曝気研究がスタート。
曝気による酸化でアンモニアが硝化されることによって汚物感がほぼ無くなることが分かった。
その後、活性汚泥法を利用したパーラー排水処理に発展した。
パーラーは、多くのタイプがあり、使用する水の量やパーラー内で牛が排泄する糞尿の量や廃棄される牛乳の量など、農家が排出するパーラー排水の量と負荷物質の量には大きな較差があることが分かった。
朝晩に集中して排出されるため、処理をスムーズに進める工夫も必要となる。
全国各地で試行されていた技術を駆使して処理を進める。
しかしながら、汚水処理は儲からない。
なので、補助事業があれば業者の意味不明な設計を信じて1000もの諭吉を投じる農家もいたし、それを止められない関係者も多数。
中には補助事業を組んでやったと自己の勧めを満足げに言うモノもいた。
イニシャルコストだけではない。
膜処理とか凝集剤、メンテナンス費用も含めた維持コストがかなり掛かる場合も。
自分では面倒だし、中味を知らないので、みな業者頼みとなる・・・
さて、パーラー排水を進めていた頃だったか、ある日北海道から電話が掛かってきた。
基本的なパーラー排水処理のことを聞かれて、何度かやりとりした記憶がある。
記憶では、パーラー排水ではなく、チーズ工房の排水処理を行いたいという内容だった。
すっかり忘れていたが、今日また連絡があり、表題のチーズ工房の方のようで、工房からの排水処理を今年施工予定で最終段階なんだそうだ。
広大な芝桜で有名な滝上町。
一度行ってみたいところだが、招待してもらえるわけではない・・・
パーラー排水ではなく、チーズ工房の排水ってどんなんだろうと・・・
気がかりなことも多いが、基本的に来た質問にはできるだけ答えたい。
今日は設計に関する質問が何点か。
エアーリフトポンプの原理とか、ブロワーポンプの選定方法など。
現場で設計図面や実際の場所を見ながら話するのではなく、電話なのが歯痒いが、たぶん30分以上だったか、かなり時間を掛けて説明したと思う。
上手く稼働できるか。
いつか、その現場にも立ち会い、そして自慢だと思われるチーズを賞味したい。
http://www.okhotsk.biz/tukinoti-zu.html
今年進める汚水処理施設も大きな山が近づいてきた。
現場作業は、毎日1つ1つが大勝負。
同じような仕事でも、天気や体調・現場の条件など様々で100回やっても100回違う。
でも、楽しい作業が明日も続く。