石を拾う
全国でも有名なT農場。
100丁ぐらい米中心に営農を展開している。
青&黄色のニューホのつなぎが従業員の目印。
何度か社長から昔の苦労を聞かせてもらったが、誰もがいやと思う仕事を淡々と。
基本は土地基盤。
田んぼの耕地整理で土がダメになったところに、プラウを掛けて堆肥を入れて作り直す。
プラウを掛けると石が出る。
ハンパな数でないが、来る日も来る日も石を拾う。
田んぼの片隅には石塚ができる。
トラクターのライトで照らして、夜中でも拾う。
次第に石が出なくなる。
石を拾って3年もすれば、その頃には堆肥も連投しているので基盤もできつつある。
3年掛けてやっと出来つつある田んぼ。
そんな時になって、返してくれと言う地主もあるが、快く応じる。
借り手の身、また別の田んぼを探して、1からのスタートを切る。
基盤が出来たら、GPSを利用して田んぼに傾斜を作る。
田んぼの長さは長い片辺が100メートルほど。
水口から排水口に向かって傾斜を作る。
その傾きは、100メートルで5センチ程度らしい。
何故するか。
米を収穫する時の熟度の斉一性を考えているから。
米は水の温度が比較的低い水口あたりは、熟するのが遅くなる。
また、田んぼの中で高低差があり、水が溜まりやすいとそこだけ熟するのが遅れる。
従って、田んぼの傾斜をコントロールして、同じような状態にしている。
傾斜を作ることで、水をあてる時間が大幅に短縮される。
労働生産性が大幅に改善される。
収穫時、全体が一緒の熟度になれば、米の評価が大きく上がる。
家畜でも、仕上がるまでに時間が掛かるが、個体毎にそのスピードは異なる。
鶏や豚などでは、オールアウトも行われているが、肥育期間中にどれだけ同じ状態に仕上げるか。
「来る日も来る日も、ただただ石を拾う」
ここに畜産農家へのヒントが隠されている。